今回はいよいよあのサイボーグ怪獣(恐獣ですが…)の登場です。
妹たちが朝食を摂っている横で朝刊を読んでいた光は、ある自動車事故の記事を見つけ、事故の原因に不審を抱き、父の陽一郎に意見を求めました。
ちなみに螢と明が食べているものは“世界の朝食”シスコーンです。
もしかしてシスコ(現日清シスコ)が番組のスポンサーだったのでしょうか?
水槽の金魚に朝の餌やりをしていた陽一郎は、光の持ってきた記事を読んで、
「光はこの自動車事故が、ガロガの仕業とでも言いたいのか? 居眠り運転と言うことも考えられるぞ」 と、至って常識的な意見を述べました。
しかし光は、事故を起こした車が、光の勤める自動車会社のライバル社「ダイトー自動車」の覆面車であることに注目し、開発中の車両の試走を、事故を起こすような未熟なドライバーにさせる訳がないと答えました。
自分自身がテストドライバーである光の意見なので、説得力があります。
つまり光は、覆面車のドライバーはガロガの放った恐獣ミサイルに驚いて事故を起こしたのでは、と考えた訳です。
なんと言うことでしょう、第11話になっても光の勤める自動車会社の名称が不明だと言うのに、この回限り、しかもこの会話以外に登場しないライバル社の名称のほうが、先に判明してしまいました。
父子の会話を聞いていた祖父の雷太は、パイプに火を入れて一服しながら
「しかしまず考えられんことだ。ガロガがそんな人目のつく場所へ恐獣ミサイルを撃ち込むだろうか」
と、一見もっともな意見を述べました。
人目のつく…って、今までも平気で恐獣ミサイル撃ちまくってますがガロガ。
「とにかく仕事に出る前に現場に寄って調べてみます」
と光が父と祖父に告げたところに、母の月子がバナナを盛った皿を持って現れました。
地球の防衛にかかわる重要な話をしていると言うのに、“世界の朝食”シスコーンに金魚の水槽に煙草のパイプにバナナにと、小道具からして生活臭に満ちていて、相変わらずゾーンファミリーはほのぼのしてます。
「光さん、遅れますよ。今日は大事な日だったんでしょう?」
と月子に注意を促された光は、他の家族にも分かるようにこう答えました。
「ええ、今開発してる新しいエンジンを積んだ車のドライバーが決まるんですよ。佐々木になるか僕になるか、残念なことに車は一台しかないんです」
「兄ちゃんが選ばれるといいなぁ」と子供らしい意見を言う明に対し、色気づいている螢は「あたしは佐々木さん。だってあの人カッコいいんだもん」と言って、「こいつぅ」と光に頭を小突かれてしまいました。
どうやら螢は光の同僚の佐々木と面識があるようです。
さて出勤前に件の事故現場を調査しにきた光は、予想した通りミサイルの落下した痕跡を見つけましたが、しかしその様子がいつもと違うことから、もしかしてミサイルは空(から)だったのではないかと、無線でメカルームの陽一郎に報告しました。
お前を誘い出す罠だったのかもしれんなと言う陽一郎に、僕もそうとしか考えられませんと光は応答しましたが、それ以上の調査は行わず、車で会社に向かったのでした。
あぁ、ライバル社の交通事故が、光を誘い出す罠だったのかも知れんとまで見破っておきながら、何故光はここで調査を打ち切ってしまったのでしょう。
出社前であまり時間がなかったとは言え、この時もっと周囲をよく調査していれば、後の悲劇は発生しなかったものを。
実はこの時草葉の陰に隠れ、一人の工作員ガロガが光の様子を窺っていたのです。
この人間に擬態した工作員ガロガ、特徴的なお髭と言い、少しダミ声まじりのしゃべり方と言い、どう見ても稲川淳二さんなんですが、オープニングのキャスト紹介に稲川淳二さんの名前がないため、真偽のほどが掴ません。
稲川ガロガは通信機で上官のレッドガロガに光が現れたことを報告し、光を尾行するよう指令を受けたのでした。
ちなみにレッドガロガはこの回より顔のカラーリングがマイナーチェンジされて、今まで目だけ赤かったのが顔全体真っ赤になり、赤鬼のようになりました。
会社に出勤した光ですが、何故かレース場でF1マシンに乗ってタイムを競っています。
光の本業はテストドライバーで、レーサーではなかったと思うのですが…。
F1マシンと言えば皆さんもご存じの通り、コクピットが狭く1人乗りで、天蓋がなくドライバーの頭部が剥き出しと言う、かなり特徴的な外観をしています。
ところがハンドルを握る光がアップで映されるシーン、彼が乗る車には何故かある筈のない屋根やらフロントピラーやらが見え、おまけにご丁寧にシートベルトまでかけているので、普通の右ハンドル車であることがバレバレです。
なんでこんな車で光のアップを撮るかな~。
ひとっ走り終えた光達ドライバーが、更衣室で私服に着替えていた時、いよいよ新しいエンジンを搭載した車のドライバーが発表されるから、全員格納庫に集まるようにと呼び出しがかかりました。
更衣室には、今朝 螢が名前を上げたライバルの佐々木もいて、光と佐々木はどちらが選ばれても恨みっこなしだぞと念を押し合います。
まるで2人の他に本命はいないかのようです。
光達ドライバーが格納庫に集まると、そこにはベールで覆われた新型車が安置されており、社長が直々に新型車に搭載されたエンジンについて、ドライバー達に説明しました。
詳細は省きますが、社長曰く完全無欠の無公害エンジンとのことです。
『ゾーン』放送当時の70年代の日本は公害に悩まされた時代でしたので、無公害車両の開発はまさに夢でした(21世紀の現代になっても某自動車大国がガソリン車にこだわるせいで、未だに夢ですが)。
社ではこの新型車でグランプリに出場し、無公害エンジンの高性能をアピールすることを狙いとしていると説明した後、社長はグランプリに出場するレーサーの名前を発表しました。
――選ばれたのは光でした。
光を囲み、グランプリのレーサーに選ばれたことを祝う同僚達。
その横で佐々木は忸怩たる表情で、同僚達の輪から視線を逸らしました。
佐々木には病気の父がいて、なんとしても新しい車でグランプリに出場したかったのです。